あはは、吏部って楽しっ♪

 何か黎深の相手してるだけでいーなんて、楽だね、楽。

 ぶっちゃけ、こんなんで金貰っていいのかな〜?って思っちゃうよ。

 私の仕事は黎深の話相手。

 本当は絳攸の雑用だったんだけど、いつの間にやら黎深用になってた。

 あれだね、黎深がネチネチと絳攸を責めたからね。

 後、他の官吏が私に雑用を頼もうとするとすごい形相で睨みつけてたみたいだしね。

 私にじゃないけど、殺気を感じたんだよね。

 振り返って黎深を見てもほにゃら〜って表情して確認はできなかったけど、官吏の表情を見れば分かるんだよね。

 すっごい怯えてたもん。

は国試は受けないのかい?」

「国試ですか?」

「あ、ああ。しゅ、しゅしゅしゅ秀麗が昔、勉強をしていたと聞いたものだから」

 私の名前はどもらなくなったが、秀麗の名はまだダメらしい。

「(秀姉上が受けるなら)受けますよ」

「そ、そうか。なら、私が勉強を見よう。こ、これでも、上位及第者だからね」

 鼻息荒く、ドンと自分の胸を叩く。

「勉強なら、絳兄上……李侍郎に見てもらってますから、お気になさらずに」

 ちょっとそう突き放してみれば、が――んと後ろに仰け反る。

 何か見ていて飽きない人だな。

 リアクションが面白いから、からかいがいあるし。

「な、なら、後見人に……」

 立ち直り、手を上げる黎深に。

「黄尚書がなって下さると」

 さらにダメージを与える。

 あは、机案に突っ伏した。

 ってか、黎深が私の後見人になったら困るんだよね。

 黎深には秀麗の後見になってもらわないといけないからね。

「あ、その書簡、戸部にですね。持って行きますね」

「い、いや、私が」

 立ち上がりかける黎深ににっこりと笑いかける。

「私が持って行きますね、黎深叔父上」

 すかさず、切り札を出す。

 黎深叔父上。

 その一言にピシリと固まり、悶えだす。

が、叔父上って叔父上って……」

 ブツブツ言いながら、バシバシと机案を叩く。

 どうやら、ツボに入ったみたいだ。

 あれから叔父上なんて言わなかったし。

「それじゃあ、行って来ます」

 悦に入る黎深を置き去りにし、戸部に向かって歩き出した。




「あら、じゃない。どうしたの?」

 戸部に向かったら、出てきた秀麗とバッタリ会った。

「ん、戸部に届け物」

 手にある書簡を持ち上げる。

「あのね、。ちょっと、いいかしら?」
 神妙そうな顔で聞いてくる秀麗に首を傾げる。

「どうしたの?」

「最近、その、変な人がいて……害はないんだけど、ちょっと、ねえ」

 ごにょごにょと濁す秀麗にピンと来た。

 もしかして、黎深じゃない?

「その人、自分を『おじさん』と呼んでくれって言ってなかった?」

「スゴイ! どうして分かったの?」

 目を丸くする秀麗。

 そりゃあ、ねえ。

 私たちの実の叔父さんですから、なんて言えるわけもない。

 それに、私が黎深に名乗ったから、秀麗にはぜひ自ら名乗り出てもらわなければ面白くない。

 ってか、肝心の場面見逃したぜ。

 おじさんと呼んでくれって言うの見たかったな。

「で、その『おじさん』がどーしたの?」

「自分をどう思うかって聞いてきたり、好きになれそうか嫌いになれそうかなんて。さっぱり意味が分からないの」

 初対面のはずなのに、と頭を捻る。

 いやいや、ちっちゃいころ会ってるから。

 ま、普通覚えてないけどね。

「そっか。他には?」

「いつも会うのは戸部周辺なの。だけど、戸部の官吏ではないのよね」

 ああ、それは不思議に思うよね。

 戸部じゃないのに戸部の周辺をフラフラ。

 絳攸からどうにかしてくれと苦情がきてるんだよね。

 さりげに、黄尚書からも。

「色々と手伝ってくれるし、良い人……だとは思うんだけど」

 秀麗にとって黎深が良い人かぁ。

 吏部の官吏が聞いたら、皆卒倒するね。

はどう思う?」

 私に意見聞くのかよ。

「この暑さでヘンな人が増えてるのかしら?」

 ふう、とため息を吐く。

 ダメダメ、そんな真顔で言わないでよ。

 噴出しそうになっちゃったじゃないか。

「ま、まあ、その、あの人は元からだと思うよ」

「あの人っては知ってるの?」

「全然! これっぽっちも知らないよ」

 キッパリスッパリ嘘を吐く。

 こういうとき、薔君似で良かったと思う。

 薔君の笑顔を真似て微笑めば、秀麗はいちころさ。

 ほらほら、ぽわわ〜んってなってる。

「さてさて、そろそろ行くね。仕事頑張って」

「ええ、頑張るわ! もしっかりね」

 手を振り、戸部の中へ入る。

 書簡を渡したら、今日もしっかり黎深で遊ぼうっと。

  




2007.5.10