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この夏は猛暑で人がバタバタと倒れている。 私は旅で鍛えていたから問題ないが、朝廷の諸官たちは体力のない文官がほとんどだ。 暑さにやられてダウンしている。 このままじゃ、本当に朝廷がストップしちゃいそうだ。 何で黄尚書の家で働いている私がそんなことを知ってるかというと、原作を知っているから……ではない。 実は吏部で働いていたりする。 なぜ戸部ではなく吏部なのか? 答えは極めて簡単だ。 夏のある日、唐突に絳攸から誘いが来たのだ。 「、吏部で働いてみないか?」 美味しく皆でご飯を食べた帰り際、一人だけ呼ばれた。 あれ? 「いきなり、どうしたんですか?」 「いや、邵可様から聞いているかもしれないが、朝廷の官吏たちが暑さにやられて使い物にならんのだ」 邵可からは別に聞いてないけど。 後、静蘭も。 二人とも愚痴を零すタイプじゃないからね。 ま、黄尚書からはよく聞いてるけどね! 「それで私、ですか?」 秀麗と同じ戸部じゃないんだ。 ってか、何で本当に吏部なんだ? 人が少ないのって、戸部のはずだけど……。 首を傾げる私に、絳攸が言う。 「安心しろ。官吏として働かすわけにはいかないから、俺の雑用係として、だ」 絳攸の、ということは李侍郎のか。 てっきり秀麗と同じように黄尚書の雑用として働かないかと聞かれるかと思っていたのに。 う〜ん、これじゃあ心が揺れるなぁ。 鳳珠も好きだけど、どっちかと言うと私絳攸派だからね。 それに、吏部がどんな感じか見てみたいってのもあるし。 吏部名物、吏部尚書の未処理仕事! こう、名前聞くだけでわくわくしちゃうね。 一度でいいから、見てみたいなぁ。 小説のネタになりそうだし。 でも、この猛暑で官吏がバタバタやられてるから、さすがの黎深も本気でやってそうだし、山積みなんてされてないかな? そうすると、吏部で仕事するメリットは絳攸がいることだけ。 あ、黎深の反応も気になるな。 「私の雑用係として、暫くの間働いてもらうことになった紅だ」 なんて絳攸に紹介されたら、黎深どうするかな? 氷の微笑を浮かべて冷静に対応するか、それとも「私が君の叔父だ」なんて名乗るか? 一方、戸部でのメリットは秀麗と仕事ができることだな。 あの黄尚書のことだ。 容赦なく扱き使われること間違いない。 充実しすぎた日々と過ごせそうで……癒し系の柚梨もいるじゃん! 悩むなぁ。 どっちが、楽しく過ごせるか? 吏部か戸部。 絳攸か黄尚書。 黎深か柚梨。 未処理仕事か癒し。 黎深の反応か黄尚書への恩(黄邸で働いているからねー)か。 悩んだ末、私が選んだのは吏部。 だって、吏部のほうが絶対面白そう! 今、黄尚書からも戸部を手伝わないかって誘われてるけど、ね。 戸部は人手が少ないけど、確か秀麗たちが戸部を手伝うんだし。 もうすぐ来るはずの燕青は、臨時施政官として問題ないし、私の出番なんて無いだろうな。 さすがに、施政官にはなれないと思うし、雑用だけだろう。 雑用なら、秀麗で事足りる。 むしろ、余計な手出しして怒られそう。 そう考えてみると、私は戸部にいなくてもいいんじゃないかって結論になる。 「絳兄上、精一杯頑張ります!」 ごめん、黄尚書。 心の中で謝りつつ、あっさりと絳攸の手を取る。 「ああ、一緒に頑張るぞ」 この、「頑張る」の意味を知ったのは吏部に入ってからだった。 2007.2.26 修正2007.3.9 |