「や、燕青」

 原作とは違い、正面から堂々と登場。

 静蘭たちを引き連れてくのは、何か悪の親分になったみたい。

 声をかけた私に燕青は静蘭たちに視線を移し、破顔する。

「おう! やっぱ来てくれたんだなー、静蘭に。さっすが竹馬の友。大感激。でもそんな大人数でくるとは思わなかったけど。おお! 左羽林軍将軍さんまで。なんと豪華な面子」

 まあ、豪華だけど一人戦えない人がいるんだよね。

 こんなとこに絳攸がいて、怪我でもしたら大変だ。

 本当は燕青が言い出してくれるが、そんな美味しい役渡すもんか!

「さ、絳兄上、黄尚書のところに行きましょう」

「ああ。事情を話さないといけないからな」

「……て、、お前も手伝ってけよ!」

 絳攸に手を差し出して去ろうとする私を燕青は目ざとく見つける。

 ちっ、見つかったか。

 だが、私には手伝えないわけがある。

……なければ作るけど、ね。

「悪いね、燕青。私には過保護な家人がいるからな」

 ビシッと静蘭を指す。

 様にそんなことはさせません。

 声には出していないが、雰囲気だけで伝わってくる。

 さっすが、腹黒静蘭。

「それに……」

 絳攸を無言で見る。

 迷子属性の持ち主を一人で行かせるわけには行かない。

 私の視線の意味に気づいたのか、楸瑛と静蘭、劉輝は納得したように頷く。

「じゃ、後はよろしくな」

 首を傾げる絳攸の手を引きながら、邸の中へ戻っていく。


 絳攸を率いて一室に通す。

 黄尚書には邸に着いた当初に言っておいたので、そのうち部屋に来るだろう。

 さてさて、私はどうしたものか?

 黄尚書が来たなら席を外したほうがいいのかな。

 二人っきりで話したほうがいいと思うし。

 で、ちゃっかり来ているはずの黎深と合流しちゃう?

 あ、それっていいかも。

 考えているうちに黄尚書が来た。

 上官に対する正式な礼を取る絳攸を見つつ、私は戸口にさりげなく移動する。

「お二人で話したほうが良いようなので、私は席を外させていただきます」

 言うと共に礼をして出る。

 黎深はどこにいるのかな?

「あ、!」

 こそこそっと隣の室から黎深が顔を出す。

 小声なのは黄尚書と絳攸に気づかれないようにするためだろう。

 私も便乗して小声で返す。

「朝ぶりです、吏部尚書」

 吏部尚書(本人としては叔父上と呼んでほしいらしい)という呼び名にへにょりと頭を下げ落ち込んでから、手招きして呼んでくる。

 なんだろうと思い行ってみると、黎深は音を立てずに戸を閉めた。

 部屋を見てからなるほど、と手を打つ。

 この部屋は隣の部屋と繋がっているのだ。

 ここでなら、二人の会話を盗み聞きして隅から出て行ける。

 さすが黎深。

 ヘタレな兄馬鹿姪&甥馬鹿だけじゃなかったんだね。


 黎深は黄尚書のところに出て行くって言うんで、絳攸が出てきたところで別れた。

 音を立てずに忍び足。

 背後からポンと肩を叩く。

「絳兄上、どこに行くんですか?」

「うわあっ! って、、脅かすな」

 ナイスリアクション。

 毛を逆立てて跳ね上がる。

 アレだね、猫を思い出させるよ。

「そっちは黄尚書の私室ですよ」

 うん、やっぱり絳攸って方向音痴だよね。

  




2006.7.1
修正2007.9.30