龍蓮に連れられて行くと、橙の髪をしたド派手な長身の美青年がいた。

 原作では見たことない顔に少々首を捻る。

「誰だ、そいつ〜?」

 珍しいものでも見るかのように、ジロジロと私を見てくる。

「我が生涯の友のだ」

「フーン、お前の友人かよ。で、何でここにいんだ? 俺様に見せびらかすために連れて来たんじゃねーだろ」

 お、俺様だって?!

 一人称が俺様の人って始めて見た。

 じっくりと青年を見てみると、何か龍蓮の将来の姿が浮かんでくる。

 いや、あんな奇天烈な感じじゃなくて、派手派手しいんだけど纏まっている?

 格好自体はそんな違わない気がするんだけど、着る人が違うとこんなに違うもんなのか。

 ってか、橙色の髪が目立ちすぎてる。

 それって地毛なのかな?

 この時代、染料でこんなに綺麗に染められるのってないよね。

「俺様が美しいからって、そう見つめるもんじゃねーぞ。仕舞いには金取んぞ、ゴラッ!」

 な、何だこいつ……。

 私の視線に気づくのはいいが、ナルシスト発言ってどうよ?

「師よ、も旅に連れて行く」

「おい、てめー! 俺様はお前の子守だけで手一杯なんだぜ? 何で余所のガキも面倒見なきゃなんねーんだ、ああん?」

 子守ってお目付け役か何かか?

 まあ、こんな小さな子一人で旅してたとは思わないけど。

 その割りには、態度でかいし柄が悪くないか?

「りゅ、龍蓮。この人は……?」

「この風流じゃない人間は……」

 言葉が終わらないうちに、青年の拳が龍蓮の脳天に落ちる。

 蹲り頭を押さえているのを横目に、青年はハンッと鼻を鳴らして憤る。

「んだよっ! てめーのセンス棚に上げて、何ほざいてやがる。大体よぉ、俺様に何の断りもなく勝手なことしてんじゃねーよ」

 未だ立てずにいる龍蓮を足で転がし、腹をグリグリと踏む。

「てめーの保護者は俺様なんだぜ? 俺様が法であり、世界であり、王であり、仙通り越して神なんだ。逆らうことは許さねえ!」

 一体何者なんだ、このジャイアニズム野郎。

 龍蓮にこんなことして、藍一族が黙ってるわけない。

 それに、幼児虐待じゃんか。

「足を退けろ」

 さすがの私も頭にきた。

「あん? 今、何て言いやがった」

「足を退けろと言ったんだ。そんな簡単な言葉すら分からないのか?」

「言うじゃねーか、この俺様に。お前、面白いな」

 ニヤニヤ笑いながらも、足は龍蓮の上に置いたまま。

 くっそー、武術の心得がない自分が情けない。

 言葉が通じない人間には実力行使を……なんて言うが、まだ五歳だし仮に武術を会得していても力がない。

 差は歴然としている。

「お前、名は?」

「先に貴方が名乗るべきではないか?」

「フーン、ヘー、そーんな態度取っちゃうんだ♪」

「なっ?!」

 信じられないことに、男は龍蓮を踏む力を強めた。

 私が名乗らないなら、龍蓮はこうなるぞって脅しかよ!

 まったく、腹が立つ野郎だ。

 一番むかつくのは、従うしかできない自分だけど。

「紅だ。貴方は?」

「紅家のガキか。その雰囲気、直系だな。ってーと、親は邵可と薔薇姫だな。うっわー、すげーおもしれー」

 つっと足を下ろし、私の顎を掴んで無理矢理上を向かせる。

「顔は薔薇姫似か。ふんふん、将来も崩れずにそのまま育つな。良かったな、傾国の美女になんのも夢じゃねーぞ」

 美女って何だよ!

 心は女だが体は男だぞ。

「せめて、傾国の美人にしてください。女じゃありませんから」

 憮然とそう言い放つと、青年は腹を抱えて笑い出した。

「ハハッ、俺様の目も曇ったか? ぜってー女だと思ったぜ」

「人様の性別を間違えるなんて、失礼だぞ我が師よ」

 我が師……って先生だよね。

 龍蓮の教育係なのかな?

「俺様は藍龍蓮の師だ。てめーもついてくんなら、俺様を崇め奉って師と呼びな」

 へっ?

 ってことは、一緒に行ってもいいのか?

「ちなみに俺様は女だ。さあ、行くぞ。我が馬鹿弟子ども!」

 さっさと、背を向けて歩きだしてしまう。

 あれ?

 今何て言った?

 聞き間違えじゃなければ女って……。

 固まる私に、龍蓮が肩を叩く。

 まるで、ご愁傷さまと言わんばかりに。

「珍しいな。さすが、我が生涯の友。師に気に入られたな」

「は? 気に入られたって何で?」

「旅の同行許可が出たのが証だ。ほら、師の気が変わらぬうちに行くぞ」

「う、うん」

 龍蓮に引っ張られるまま、師のあとを追った。

 ねえ、邵可に秀麗に静蘭。

 私、ちょっと早まったかもしれない。

 今から家に戻っていーかな?

「おっせーぞ、お前ら!」

 正直、師と上手くやっていく自信がありません。

 三人での旅がここから始まる。





2006.11.16