月の無い雨の中。

 私は今まで「悪いこと」なんてしてない!……なんて言えないが、それほど「悪いこと」なんてしたことがない。

 光が目を焼く。


 例えば、学校をサボったり、他愛も無い嘘を吐いたことぐらいだ。

 キキキキー。


 この21年間、平凡に暮らしてきた。

 響くブレーキ音。


 高校卒業後、専門学校に通い、ようやく夢を掴んだのにコレだ。

 近づいてくる車。


 神様は、どうやら私がお嫌いのようだ。

 足は地面に張り付いたのかのように動かず。


 まだ、好きな「彩雲国物語」だって完結していないのに!

 傘が手から滑り落ちる。


 いや、ここは結婚(相手なんかいないが)もしてないのにって言うべきか?

 遠慮なく雨は体を濡らし。


 はあ、やってらんねー。

 体温を奪っていく。


 せめて、今書いていた小説ぐらいは終わらせたかった。

 車は導かれるかのように進み。


 あーあ、父さん、母さん。
 刻一刻と迫っていく。


 先立つ不幸をお許しください。

 キキキキキー。


 遺言。

 誰も上げる事の無い悲鳴。


 ペットの犬をよろしこ。

 それに代わるかのように高く鳴く。


 追伸。

 ドン。


 お姉ちゃん、いらないだろーけど、私の部屋のものあげるわ。

 衝撃に宙を舞い。


 終幕。

 頭から硬いコンクリートへ叩き落され。



 私の意識は途絶えた。




2006.9.24