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――明日の朝にでも秀姉上に会いに行ってきます。 なんて黄尚書に言ってたのに、気づけば正午ちょい前だぜ? う〜ん、調子に乗って課題やってたのが悪かったな。 「ってなわけで、行くぞ珀」 「は?『ってなわけ』ってどんなわけなんだ!」 ふふ、ここは友人殿を道連れにしよう。 「どーせ、秀姉上は妨害に合って中々到着しないから、私たちが害虫どもから守って査問会場所まで連れて行ってあげようってわけさ。嫌だな、珀。まさか、断らないだろ?」 一息で言って、小ばかにしたように笑う。 暗に断るなんて腰抜けのすることだ、と滲ませて。 「な、僕が断るわけないだろ! 第一、あいつは不正なんかしてない。脳なし進士しか残らないのは気に入らないから、とっとと迎えに行くぞ」 フンと鼻息荒くまくし立てる。 珀明ってば、素直じゃないなー。 だって、今の言葉訳せば、「僕はあいつらを信じているんだ。大変だろうから、迎えに行こう!」って言ってるようなものなんだよね。 う〜ん、青春。 珀明のさ、こう良い感じに捻くれてるところが好きだな。 「何してる。、行くぞ」 いつまで待っても歩き出さない私に焦れて、珀明が声をかけてくる。 「ああ、今行く」 肩を怒らせて先に行ったものの、律儀に待っている珀明。 うん、やっぱり可愛いな。 さすが珀明! 彩七家たる碧家の貴族様!! 皆、家柄や権力、金に弱いんだねー。 あれだね、とある黄門様を思い出すよ。 こう、印籠出して控えおろ〜って、周りがへへぇってなって面白い。 自分よりも官位の低い新進士の珀明に下手に出て、ヘコへコしてんだよ。 いやぁ、あれは見ていておかしかった。 とか言って、私も彩七家の紅家で、彩虹なんか貰っちゃってるし、取り入ろうとするアホもいるけど、そんなの少数だ。 紅家とは名ばかりの貧乏だし、『彩虹』の意味分かってない官吏たち(自分含む)が多数だししょうがない。 あ、夏働いていたせいか、戸部官吏たちは懇意にしてくれるよ。 疲れてるだろ、なんてお茶とお菓子を出してくれたりするんだよね。 さりげなく季節の折に文を出すお付き合いをしている人もいるし。 暑い夏に頑張って働いていたかいがあったよ。 <> <来たよ、来たよ> 木々たちの言葉に耳を澄ませば、ガラゴロと引き車の音が聞こえてくる。 「あ、秀姉上が来た」 「ん? あの手引き車か?」 「そうそう。ほら、出てきた」 止まった引き車に置かれている油壺の中から、秀麗がひょっこりとはい出てくる。 「……ありえん」 憮然とした表情で珀明は呻く。 そりゃぁ、そうだよね。 彩七家の中でも、一・二を争う名門の紅一族。 その中でも秀麗は直系の血を引くお姫様だ。 高貴な血を引くお姫様が、引き車の油壺の中からひょっこりと出てくるなんて、普通じゃ見れない光景だろう。 「、珀!? な、なんでここに」 「こうなることは予測済みだよ」 な、と隣にいる珀明に振る。 「だから迎えに来た。名ばかりの貧乏紅家出身のお前と違って、僕に甘い官吏は多いからな。――連れてってやる」 途中、燕青と再会して邪魔な奴らをボコりながら査問会場まで急いだ。 開かれた場で秀麗は問いによどみなく答え、翌日から官吏たちの態度が変わっていった。 っていうか、官吏って馬鹿だよなぁ。 王が介入不可能って知ってるはずなのに、秀麗の及第を疑ってたなんて。 ふう、配属が決まるまでもう少し。 気合入れて頑張りますか。 よしっと活を入れて、歩き出すと秀麗を見つけた。 駆け寄ろうかと思ったら、誰かが秀麗と話していた。 足音を殺し、耳を澄ませる。 あ! あの男、さり気なく秀麗にアプローチしてるけど、全く気づかれてもいない。 ハッ、ざまーみろ! 秀麗は恋愛にニブニブなんだぞ。 ……でも、後で静蘭にでもチクッとこっと。 2007.8.16 |