十年ぶりの貴陽だ。

 皆、私を覚えているだろうか?

 度々文も出していたし、大丈夫だと信じたい。

 まあ、連絡と言っても一方的だったからなぁ。

 怒ってるかもって考えると、帰るのが嫌だな。

 だけど、日記も溜まったし、そろそろ物語が動き始める。

 私としては、大好きな絳攸と早めに縁を作っておきたい。

 夢は絳兄上と呼ぶことだ。

 血の繋がりはないが、絳攸は叔父の養い子である。

 従兄弟関係に当たるから『兄上』って呼んでもおかしくない。

 あまつ、秀麗と結婚してくれれば本当の兄になる。

 静蘭(とその異母弟)、ゴメン。

 君たちの恋は応援できないよ。

 私の欲望のために!







 あれ?

 誰もいない。

 やっべー、帰る時期間違えたかも。

 もしかして、もう妃として後宮に行っちゃってる?

 そしたら、邵可も静蘭も帰ってこなくなるし、何よりも秀麗のおいしいご飯が食えない。

 うっわー、のおバカさん。

 パコンと自分の頭を叩いて、ボロボロの邸を見る。

 あー、結構変わったなぁ。

 庭なんて随分と寂しくなっちゃったし、屋根とかひどいよ。

 私の部屋、まだ残ってるかな?

 秀麗のことだから、いつ私が帰ってきてもいいように掃除されているはず。

 部屋まで行くと、うん、当たり。

 あの頃のまま、そっくり保存してある。

 嬉しくて嬉しくて、つい顔がにやけてしまう。

 荷造りを解き、床にぶちまける。

 あー、重かった。

 私は文字を習ってから、毎日日記を書き続けた。

 旅をしてからはなおのこと、細かく明確に自分の考えなどを記した。

 塵も積もれば山となる。

 さっすが十年も続けりゃ、重たくなるわなぁ。

 ちっちゃな本屋ぐらいあるかも。

 後、こっちは土産だな。

 邵可には湯呑み(私作)。

 秀麗に簪(私作)。

 静蘭には短刀(私作)。

 ふっ、全部私が作ったから、材料費は安く済んだ。

 形もそんな悪くないし、気に入ってくれるといーな。

 ちゃんと人にデザインを見てもらったから、デザインは悪くない。

 さーて、皆が帰ってくるまで何してよっかな?

 でも、まず最初にすることは……。

「ただいま」







2006.9.28